※この記事は、小学館 Suits womanに掲載していた記事です。サイト閉鎖に伴い、許可をいただき転載しています。
※2019年10月当時の内容です。現在とは異なる場合があります。
昨年の10月15日から22日まで、遅い夏休みとしてかねてから計画をしていたこともあり、フランスのニースとカルカソンヌへ海外旅行に行きました。一般的に“安定期”と呼ばれる妊娠5か月の頃でした。
妊娠中の旅行、ましてや海外旅行は、万が一のことを思うと行かないに越したことは無いと思います。
今回の記事は、妊娠中の海外旅行をオススメする記事でもハウツーを紹介する記事でもありません。
私が妊娠中に海外旅行へ行った体験を、一個人のケースとして書いたものですので、読み物として読んでいただければと思います。
▷そもそも、なぜ海外旅行に行くことにしたのか?
世の中的に非推奨ムードの妊娠中の旅行。「妊娠中に海外旅行に行って楽しかった!」などとSNSに投稿しようものなら、炎上まちがいなしです。
もちろんそれは、お腹の赤ちゃんに多少なりとも危険があるからなので、当然のことだと思います。体調が良いとは言え、想定外のことが起きるのが妊娠中の体です。
私自身、海外旅行を検討した時、体のこと(お腹の中の赤ちゃんのこと)で不安が全くなかったかと言えば嘘になります。
それでも最終的に行くことに決めた理由はいくつかあります。
理由1、旅が好きなので、行けるうちに行きたかった
旅のライターを自称するくらい元々旅行が好きで、仕事で大きなプロジェクトが終わった節目などに年1~2回は海外に渡航していました。妊娠が発覚した時、産後しばらく海外旅行には行けないのではと思い、安定期での渡航を検討しました。実際に産後7か月の現在、海外に行けるかどうかと言われると、私と子供の様子から考えると近場なら行けそうかも?という状態ですが、いかんせん産後は何かと物入りで家計は火の車……。以前のように、「行きたい!行くぞ!」とはならないのが実状です。
理由2、妊娠中の旅行を自分で体験して記事に書きたかった
妊娠中の海外旅行について色々調べたのですが、はじめにも書いた通り妊娠中の海外旅行は炎上しやすい話題のためか、「私が実際に行ったらこうでした」という体験談があまり見つかりませんでした。自分の体とお腹の状態が良く、もし可能であれば、実際に自分で体験したうえで、ライターとして記事に書きたいと思いました。
理由3、身近な人で妊娠中に海外に渡航した経験がある人が数人いた
妊娠初期に韓国へ旅行に行った友人と、安定期〜後期の頃に仕事でハンガリーへ出張に行った友人がいました。なので、どういうトラブルが想定されるのか、事前に何を準備すれば良いのかなど相談をすることが出来ました。
ちなみに、その友人2人が出産した病院と同じ病院で私も出産しました。
理由4、母子ともに体調が良好だった
この後に詳しく記載しましたが、最終的には主治医の先生の意見を参考に、旅行に行くことを決めました。
理由1と2は私の欲求ですが、無理をしてでもやらなくてはいけないことではないと思います。
主治医の先生の診断を受けて、行くかどうか最終判断をしました。
▷主治医の先生に相談
とは言え、妊娠中に海外旅行へ行くって……大丈夫なのだろうか!?
この記事を読んでいる方は、ほぼみんな思っていると思います。私もそうでした。
旅行に限らず妊娠中は、『わからないことや迷ったことがあったらネットの記事を鵜呑みにしないで、主治医の先生の判断に従う』ことを夫婦で決めていたので、主治医の先生に相談しました。
旅行する期間中の私は妊娠20週(5か月)。つわりも落ち着いてきて、私自身の体調もお腹の赤ちゃんの様子も問題なく良好でした。妊娠中期では、体調に異常がない限り通常は診断しない子宮口の状態もチェックしていただきました。
仕事もペースは落としつつも、まだまだやっていました。
「『絶対に大丈夫。行って良いよ』とは、医師の立場からは言えないけれど、とても良い状態です。行くのは自己判断に任せますが、くれぐれも無理はしないように。」とのことでした。
▷海外旅行保険に加入
次に保険のことを調べました。
海外で万が一のことがあった時に、高額な医療費が請求されたり、医療費負担が理由で十分な処置が受けられなかったりという話を目にしました。また、妊娠中のトラブルが対象になっている保険は少ないです。
いつもの旅行であれば、普段使っているクレジットカードに付帯している海外旅行保険で十分なのですが、今回は妊娠中。やはり対象外でした。
妊娠中に入れる保険を調べ、22週未満まで保険の対象になっているAIU損保の海外旅行保険に加入しました。(※2018年8月当時の規約です。ご利用の際はオフィシャルサイトで詳細をご確認ください。)
この保険、空港でサクッと入れる手軽な海外旅行保険にくらべると高いです。ただ、金額の問題ではないので迷わずに入りました。
▷旅行先、航空券、宿の選定
渡航先は医療技術が日本と変わらないと思われる国にしました。主治医の先生にも渡航先の話をしました。
かねてから夫婦で行きたいと話していた、フランスのニースと城塞の町カルカソンヌです。
10月で、世の中のバケーションシーズンはもう終わっているので、混雑していないというところもミソでした。
私は航空券と宿を探すのがとても好きなので、いずれも妊娠中の自分でも無理のないものを選びました。航空券は往復共に、成田発カタールのドーハ経由のニース着を購入。経由地のドーハでゆっくりできるように、乗り継ぎ時間も普段より余裕を持ったものを選びました。
宿も空港からの行き方に無理のない場所のものを探しました。空港からのバスが着く最寄りのバス停からホテルまでの道をGoogle Mapのストリートビューで確認して、危険そうなエリアじゃないか(万が一の時に走れないので)、坂道じゃないかなど、慎重に選びました。
▷普段の旅行とは違う旅行プラン
もともと、観光名所などを計画通りにきっちりまわるようなタイプではなく、現地についてから思いつきでブラブラするのが好きなタイプなのですが、私も夫も歩くのが好きなので、気がつくと1日中すごい距離を歩いていたということがよくありました。
欲張らずに散歩するくらいの気持ちで行くことと、絶対に走らない、少し歩いたらすぐ休む旅にすることにしました。
2人の旅じゃなくて、3人の旅なので、お腹の声に耳を傾けながらの旅にしました。
▷我慢することを楽しめるかどうか
次々に“妊娠中NGのもの”が誘惑してきても……。
私はあまりにも妊娠に対して無知だったため、妊娠するまで全然知らなかったのですが、本当に妊婦さんには出来ないことが多いです。
港町の南仏ニース、道ばたのレストランには新鮮な魚介類が並び、生牡蠣と白ワインを楽しむカップルの姿。「うっわ〜!あれやりたい!」と思ったのも一瞬、アルコールはもちろん、生ものも妊娠中に避けた方が良いものリストに入っていたのでした。(※生ものは鮮度や衛生面で問題がなければ、絶対に食べてはダメというわけじゃないと病院で言われましたが、海外なので万が一のことを考えて避けるようにしていました。)
カルカソンヌで食べた夜ごはんでは、食後にドルチェかチーズかどちらか選べるようになっていて、「フランスのチーズって、それはそれは美味しいんでしょうね〜!!」と思いながらも我慢しました。
面白そうなアトラクションがあっても、我慢我慢……!
地元のビンテージショップで素敵なワンピースを見つけても……もちろんお腹が入らない。「出産後、着たらどんな感じになるんだろう?」と想像を巡らせてみても、いまいちわからない。二度と出会えない素敵なワンピース。悔しいけどお買い上げには至りませんでした。
そんな“我慢”をむしろ楽しめるかどうかがキモでした。
「お腹の子が産まれて、いつかみんなでまた来ることが出来たら……、その時は思いっきり生ものを食べるぞ!!その代わりに、今はクロワッサンとバゲットを楽しみます〜」というふうに。
後半のマンガには、実際に行った時のこと、私が持っていって良かったと思った旅の持ち物、服装などを描きました。
のんびり無理をしない旅をモットーにしたのですが、ニースからカルカソンヌへ行く日の移動で、バスが遅れ、かなり余裕をみていたはずなのに電車に乗る時間ギリギリになってしまいました。「走れないから!!」と叫びながら、全力の早足でホームにたどり着いたら、乗る電車も遅れていたのか、無事に乗ることが出来ました。
ニースで移動中のバスだって、必ずしも座れるとは限りません。やけに揺れるバスで立ったままの時間、両足と両手で必死にバスにしがみついていました。
お腹がまだあまりふくらんでいない時期だったので、妊婦だと気付かれることもなく、日本のようにマタニティーマークも無く、“普通の人”として扱われる中で、いかに危険を察知して避けるかを旅の間中気にしていました。
もちろん、ホテルや飛行機のチェックイン時やレストランで注文する時は「妊娠中です」と自己申告をしました。
旅行中に喉が痛くなってきてしまい、日本から持っていったのど飴がきれてしまったので、薬局でのど飴が欲しいですと言ったのですが、「フランスでは妊婦には何も処方できないんです。ごめんなさい」と言われ、スーパーで見つけた飴でなんとかすることになりました。
海外旅行に限らず、どんなに備えをして行っても、大なり小なり困ったことが起きたり、悩まされたりするのが妊娠中の旅行だと思います。
あと、何よりもすごく“後ろめたい気持ち”がつきまといます。
私自身、SNSへの投稿はもちろんのこと、身近な友人にもほとんど旅行の話はしませんでした。
行くと決めたのだから、思い切り楽しむことにすれば良いのでは?とも思ったのですが、そんなに簡単に気持ちは切り替えられませんでした。
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